十勝千年の森/TOKACHI MILLENNIUM FOREST

十勝千年の森では、大自然を体験できる北海道ガーデンの他、ヤギの哺乳体験なども楽しめるファームガーデン、見て食べて楽しめるキッチンガーデンや現代アートの展示、セグウェイに搭乗できる体験ツアーがあります。

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イングリッシュローズが咲き誇る 7月に見逃がせない草花 


 北海道には一般的に梅雨はないとされていますが、実はオホーツク海からの冷たい湿った空気がもたらす蝦夷梅雨があります。うっすらと薄暗く、曇りの日が続くこの季節。ガーデンまでの小道を歩くと、ろうそくの灯のように森を照らしてくれる花があります。濃いピンク色をしたビーズのようなつぼみが、ふわふわと泡立つように咲く花の名前は「エゾノシモツケソウ」。
 今回はアシスタントヘッドガーデナーの笹川慎太郎とともに、7月中旬が見ごろの草花を紹介します。メドウガーデンで何気なく目にする光景が、より魅力的に感じられるかもしれません。◎まさに運命の出来事だった 笹川は大学卒業後、花への興味関心から東京都の生花店に就職しました。フラワーアレンジメントで綺麗に美しく魅せること追求する一方で、「形がそろっていて、葉にしみひとつない生花の生産のために、大量の農薬を使用していることに疑問を感じていた」と話します。たまたま手に取った、暮らしのデザインの情報雑誌「Casa BRUTUS(カーサ ブルータス)」に紹介されていた、ダン・ピアソン設計のメドウガーデンの写真を見て、衝撃を受けた笹川は、迷う間もなく北海道へ。この庭を見て回り、農薬不使用のオーガニック栽培や、紙を使う新聞社が森を育てて自然に返すカーボンオフセットのコンセプトを知ると、強く心を揺さぶられたのです。「来て後悔したとしても、来ずして後悔はしたくない」と思い、地元へ戻るとすぐに会社に辞めて、採用試験に応募。4人の候補者の中から、唯一ガーデナーとして選ばれ、新たな道を歩み始めました。

◎約50種類のバラが真っ盛り 十勝千年の森に現在在籍する4人のガーデナーたちは夏の期間中、枝の剪定や植栽、収穫などの作業に追われ、寸暇を惜しんで働いています。蝦夷梅雨が去ると見ごろを迎えるのが、イングリッシュローズ。この品種は、花弁がピンととがった剣弁型のバラとは違い、花弁の丸みが特徴です。50種類ほど栽培していますが、そのバラを生けた瓶や、水面に並べる装飾展示を作るのもガーデナーの仕事。来園されるお客さまに、「ひとつずつ異なる香りや形、咲き方、色を楽しんでもらいたい」との思いで、工夫を凝らしています。イングリッシュローズは四季性で、一度枯れた後、8月下旬に再び咲くというのも魅力です。

◎転換期を迎えるメドウガーデン 2008年のグラウンドオープンから10年以上が経ち、当時植えたいくつかの草花は寿命を迎えています。そこで苗を4分割し、ポットで大きく育てて根を強くし、再び土に植えるという「株分け」を行っています。このようにして成長した、白やピンクの小花をたくさんつける「ヨウシュハクセン」は、昨年あたりから成熟し、新たな景観を創り出しています。
 白く細長い5枚の花弁が星型に咲く「ミツバシモツケ(ギレニア)」も、時間の経過とともに、知らぬ間にこぼれた種から芽が出て、メドウガーデンの入り口をにぎわせています。

◎成功の裏にあるいくつもの失敗 このガーデンに咲く草花の花苗は入園時の受付場所となるビジターセンターマンサードホールの売店で販売されています。笹川は、ガーデニングに興味を持つ人に対して「大切なことは、とにかくトライすること」といつも伝えています。宿根草の場合、1年目には咲かなくても、2年目以降に花開くこともあるからです。
 笹川自身も、ダン・ピアソンと新谷みどりが作り上げてきた、庭のビジョンを理解するまで相当の時間がかかり、剪定や植栽の作業でも失敗を重ねてきました。「今でも叱られることはある」と苦笑いしますが、自然の表情の移り変わりを日々感じながら、きょうも日の出とともに庭に向かいます。(撮影:野呂希一)

笹川 慎太郎

笹川 慎太郎

Shintaro Sasagawa

アシスタントヘッドガーデナー

1986年8月26日生まれ。神奈川県横浜市出身の生粋の「はまっこ」。2010年法政大学工学部建築学科を卒業後、東京都の生花店に3年勤めた後、2016年に入社。千年の森の庭づくりに憧れて、この森を目指そうと決意した数日後にホームページに採用の募集がかかったという強運の持ち主。父はグラフィックデザイナー、4歳上の姉は美術大卒という芸術一家で、趣味は音楽鑑賞や描画。この庭のお気に入りは、真っ赤で野性的なバラ「ロサ・モエシー」と宿根草の「ユーフォルビアグリフェンシー‘ファイヤーグロウ‘」の組み合わせ。この茎の色がバラの花びらと同色の組み合わせにダンのこだわりを感じるという。

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